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再犯は予測できるのか

専門家の判断は妥当か
新聞などで事件が報道されたり,容疑者が逮捕されたりすると,インターネット上は,「また繰り返すに違いない」,「性犯罪は治らない」など,「再犯」を予測する声であふれることは珍しくない。こうした素人的な再犯予測の精度に期待する人はほとんどいないだろうが,実は,非行や犯罪の専門家による主観的な再犯予測も,さほど「当てにならない」という研究結果がある。対象者の生い立ち,態度や行動傾向,犯行の態様等のあらゆる情報を持ち,臨床経験を積んだ専門家であれば,その人の将来の再犯の可能性をある程度予想できそうなものであるし,できてほしいところである。しかし,残念ながら,こうした専門家による再犯予測は,その経験値や力量による差が大きく,実際の再犯との関連は低いとされている。

リスクアセスメントツール
専門家による主観的な再犯予測に代わり,「リスクアセスメントツール」と呼ばれるツールが開発・普及してきた。これは,再犯を予測するリスク因子を統計的な手法を用いて抽出し,かつ,評定方法も構造化されたものであり,ターゲットとする犯罪種別,対象とする年齢層や性別などによって様々なツールが開発されている。これらのツールは,一般的に,過去の犯罪歴など「変化しない」リスク要因と,反社会的な人間関係,反社会的な認知や態度といった,治療的介入等によって「変化する」リスク因子から構成され,数量的に再犯の危険性を把握できる。
最近では,「リスク因子」に加え,再犯を抑止する「保護的因子」にも着目され,それに特化したツールの開発も進められている(例えば,セルフコントロール力(個人内要因),ソーシャルネットワーク,専門的ケア(個人外要因)など)。つまり,犯罪歴があって反社会的な態度があっても(リスク因子),サポートしてくれる良好な人間関係が維持されれば(保護的因子),再犯には至りにくいのである。

再犯予測ツールの有効活用
こうしたツールは,あくまで再犯防止のための治療・処遇に活用するものである。決して,「再犯しそうな人」という「レッテル貼り」に陥ってはならない。専門家がこうしたツールを活用して個々の対象者のリスク因子を特定し,そのリスク因子を低減させたり,適切に管理したりする働き掛けを行うこと,保護的因子を強化することができてこそ再犯予測ツールの意味があるのである。(西田篤史)

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