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非行少年・犯罪者がいなくなると、犯罪心理学者はこれからどうする?

2021年9月25日付けコラム「少年非行の劇的な減少」でも紹介されたように、少年非行は減少しています。また、成人を含めた犯罪も同様、例えば刑法犯では下図(令和3年版犯罪白書)のとおり減少の一途をたどっています。非行少年も成人の犯罪者もどこへ行ってしまったのでしょう。近年の減少については犯罪心理学、社会学、教育学など様々な観点から論じられています。例えば、若者のエネルギーの低下、不満感の減少、体制内化による従順、少子化の影響、反社会的から非社会的傾向への変化など諸説ありますが、現時点では明確な統一的見解はなく、専門家の間でもその原因論については、まだ共通認識になっていないように見えます。

このように非行少年・犯罪者が減少し、ついには世の中からいなくなってしまったら、犯罪心理学者はどうするのでしょう。職を失って、おまんまの食い上げ?あるいは、犯罪心理学という学問はどうなっていくのでしょうか。

いや、心配は不要です。仮にどんな時代になったとしても、人間社会が続く限り、犯罪がゼロになることはなく、犯罪心理学者の”失業”も犯罪心理学の”消失”もなく、おそらく未来永劫的に犯罪心理の研究・探求は続くでしょう。その証拠に、犯罪の減少にもかかわらず、毎年開催される日本犯罪心理学会の大会では、毎回新たな興味深いシンポジウムや研究発表が盛んに行われています。関心のある方は、ぜひ学会誌『犯罪心理学研究』特別号(大会発表論文集)をご覧ください。多くの大学図書館に所蔵されていますので、一般の方でも閲覧できます。それを見れば、全国の犯罪心理学者が熱い議論や研究発表を展開している様子が伝わるでしょう。また、研究論文の定期刊行は年に2号、こちらはJ-STAGEでもご覧いただけます。

世相や時代が変化し、全般的に非行・犯罪は減少しつつも、ネット犯罪、詐欺、いじめ、あるいは不法投棄など、見えにくい非行・犯罪は続いています。大麻などの薬物犯も蔓延しています。暴行、殺人などは多少の変化はあっても、極端に減少しているわけではありません。小説、マンガ、ドラマ、映画などでは、犯罪物は定番人気です。暴走族やヤンキーと言われた不良生徒たちは、確かに少なくなりましたが、なぜかコミックの世界では相変わらずの人気のようです。人々は、心のどこかで反社会的な出来事に注目しているのでしょう。犯罪に謎は付きものです。犯罪心理学者の探究に終わりはありません。(堀尾良弘)

*上図は、犯罪白書令和3年版p3より引用したものです。

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