コラム
オーストラリアの大都市
シドニーは,オーストラリア最大の観光都市であり,世界で最も美しい街の一つとして知られている。青い海と空に白いオペラハウスが映える風景を,多くの人が知っているだろう。シドニーの街は,広大な緑の公園をいくつも配しながら,歴史的建造物が多く残している。レンガ作り,石造りの橋や建物,石畳の街は何とも言えない美しさである。もちろん,街の中心部には,現代的な高層ビルが立ち並んでいるが,そんな街の中でもリスやオポッサムを見かけることがあって,自然と文化の見事な融合は,一見に値する。
しかし,この美しい街が,かつて「有罪となった犯罪者」によって作られたということを知っている人は多くはない。シドニー中心部には,Hyde Park Barracksという,当時流刑の受刑者たちが寝泊まりしていた粗末な建物が残っている。今では博物館として公開されているが,そこでは,こんな文章が掲示してあった。
Behind the bright diorama of Australia felix lurked the convicts
They were statistics, absences and finally embarrassments
なんとも悲しい表現なのだが,その後この町が,多くの移民を受け入れ,多様性を尊重しながら繁栄してきたことを考えるとき,美しさの中に隠されている様々な人々の心はどんなものだったのかなどと考えたくなる。(門本泉)