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若者のカップルに見られる束縛行為の危険性

愛し合った者同士が交際を始めることは,とても幸せなことである。心の底から喜びが湧き上がり,ワクワクして身体が震える感じがする。この至福の体験は,恋する者の特権である。だがここに落とし穴がある。


恋する者は,激しい恋愛感情があるからこそ,愛が永遠に続いて欲しいと願う。それは自然な人間の感情である。ただこの感情をエスカレートさせた場合が問題である。愛が永遠に続くために,交際相手を誰かに奪われないようにしようとするのである。たとえば交際相手が他の異性と交友していないか,交際相手のスマホの送受信の内容をチェックしようなどと考えるのである。このようにして束縛行為が始まる。束縛行為とは,交際相手が自分から離れていくことを阻止するために,交際相手の行動を監視し,管理することである。
交際相手からの束縛行為についての実態調査は,いくつか実施されている。実態調査によって異なるが,たとえば「他の異性と話をしないと約束させる」は,交際経験者の中で約10%~30%の者が経験をしている。最近の若者は交際相手を束縛しようとすることは,決して少なくないと言ってよいであろう。
束縛行為は日常生活の行動の自由を制限するものであるから,束縛行為に応じれば日常生活に大きな支障が生じる。多くの者にとっては苦痛である。苦痛ではあるが,愛情を感じる交際相手に対して「嫌だ」とも言いにくいことも事実である。結局束縛行為に従ってしまうのである。
また若者の中には,束縛行為は交際相手の愛情の表現であるとポジティブに受け取る者が少なからずいる。「それほどまでに私を愛してくれているのね」と思うのである。束縛行為がエスカレートして友人が心配しても,本人は問題意識を持たないこともある。海外の文献を見ると,身体的暴力を受けてさえ,交際相手の愛情の表現として受容する場合があることが報告されている。
最近の若者のカップルに見られる束縛行為は,発展すると身体的暴力あるいは性的暴力に至る危険性がある。つまり束縛行為はデートDVの入り口である。だから「この程度なら我慢できる」と軽視はしてはならないのである。
(笹竹英穂)

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