コラム
犯罪心理学の大学院研究室
このコラム企画の読者の中には,将来,大学院に進んで犯罪心理学の研究をしてみたい,と希望する方がいらっしゃるかと思います。そこで,一例ではありますが,私の研究室の状況を紹介したいと思います。
今の大学に赴任して11年目ですが,その間,私の研究室で学位を取得した院生が,修士号が18名,博士号が3名となりました。現在は,修士課程が5名,博士課程が7名おり,それぞれが熱心に研究を続けているところです。本学の他の研究室と比べると,犯罪心理学は人気があるのか、けっこうな大所帯となっています。
犯罪心理学が関連する大学院の多くは,公認心理師を目指す資格取得型の研究室がほとんどかと思います。一方、私の研究室は,私が臨床心理学を専門としていないこともあり,少しでも犯罪事象に関連するテーマであれば,来るもの拒まず,といった風変りな人が集まる研究室になっています。院生は,現在に至るまでに内部進学者に加え、留学生,社会人,他大学からの進学者といったメンバー構成となっており,他大学や研究所に勤めながら博論を書いている者,出身国や無人島のようなところで研究を続ける者なども所属しています。
扱うデータも様々です。犯罪に直結する研究を行う院生は,アーカイブデータやオープンデータ,犯罪発生現場の環境データ,犯罪場面に遭遇した人からの聞き取り,軽微な犯罪被害に遭った人のweb調査データなどを扱っています。他方,犯罪心理の背景要因などに関連する研究を行う院生の多くは,webによる心理尺度も交えた質問紙調査によるデータとなっています。また,刺激に対する反応時間や生理反応を分析データとする院生もおり,それぞれのデータ解析においては,SPSS,SASjmp,HAD,Rなどなど、使えるパッケージは使いこなして,質的データであっても多変量解析などで検証することがルーチンとなってもいます。
大学院生は,ただ専門知識や研究スキルを教えてもらうだけではなく,自ら探し出し,自ら生み出す意識がなければ,研究を続ける意欲は軽減してしまいます。なにより,研究は楽しい,研究が好きだ,と思えることが重要です。幸いなことに,これまで研究室に集まってくれた院生諸君は,熱心に研究を続け,論文という成果物を完成させてくれました。大いに感謝しているところです。 (桐生正幸)