コラム
心理学を学ぶ次の世代に望むこと
以前の職場でポリグラフ検査をやっていて、大学に移ってからもポリグラフ検査についての弁護側意見書などを書いている関係で先日、マスメディアから取材を受けた。記者はこの分野にほとんど知識がなかったので、2時間くらいかけてかなり丁寧に説明した。どちらかといえば、肯定的な立場からのお話になってしまったので、この記者は公平性を担保するという意味で、ポリグラフ検査に批判的な研究者のところにもいって取材をして、記事を作ったようだ。ところが、掲載された記事は誤った理解に基づいたかなりひどいものになってしまっていた。その理由は、記事を読めば明らかなのだが、取材を受けたもう一方の立場の人が、実際にはポリグラフ検査やその実務について、ほとんどなにも知らないにもかかわらず、いろいろ批判的なことを語ったからだ。
犯罪心理学の業界は、いい意味でも悪い意味でも注目され、マスコミなどで取り上げられることが多い。しかし、なぜかあまり制度や実情を理解していない人が、誤った知識を饒舌に語ったり、見当違いの批判をすることが多すぎるように思う。その範囲は、警察、裁判、矯正、少年法などの犯罪心理学のかかわるすべての領域に及ぶ。確かに、日本の司法システムにはまだまだ上手くいっていないところもたくさんあるだろう。実務家はそれを承知のうえで日々、改善しようと努力しているのだ。いきなり見当違いのところを声高に批判されても混乱を招くだけで事態は改善しないだろう。
公認心理師関係で、いろいろな大学で「司法・犯罪心理学」が開講されるようになった。次の世代の、少なくとも心理学を学んだ人には、正しい知識に立脚した批判と改善への提言が出来るようになってもらいたいと思う。(越智 啓太)