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書籍紹介

身体の方から心の統合や調和を目指すアプローチ

久保隆司氏(以下、「久保氏」という。)の『ソマティック心理学』(2011年6月20日発刊、春秋社)を紹介いたします。

この書籍は、臨床心理学の領域で、心身一如・心身統合を大切にするアプローチ、特に身体から心理へと働き掛けるアプローチについて理解していく上で、重要かつ幅広い情報に触れることができるものです。
近年、矯正の領域でも、マインドフルネスといった身体感覚を大切にするアプローチや処遇技法が導入されたり、リラクゼーションを含めたコーピングに注目が集まったりしています。身体から心理へと働き掛けるアプローチについては、本学会の年次大会の発表テーマにもよく見られるものの一つとなってきています

今回、紹介する本の書名に入っている“ソマティック(somatic)”という言葉は、古代ギリシャ人が、身体を意味する言葉として使っていたsoma(ソーマ)が元になっており、somaには、生き生きとした身体という含意があるとされます。ソマティック心理学とは、「西洋版『身心一如』」(同書、p4)の心理学であり、身体性を重視している多種多様なアプローチの総称であり、心身関係を重視する心理学の一分野」(同書、p6)と言われます。本書は、日本ソマティック心理学協会の会長でもあられる久保氏が、ソマティック心理学のことについて、その定義や歴史的な流れ、研究成果、各種実践的アプローチについて、体系的・網羅的にかつ丁寧に整理・説明されているものです。

ソマティック心理学の領域では、特にトラウマに関する研究や実践が豊富にあり、神経生理学的な研究や説明、それに基づいた治療実践の方法も紹介されています。少年鑑別所等、矯正での実務においても、心的外傷を抱える対象者への処遇指針等を考える上で、とても広範囲からヒントが得られる本であると思います。
言語的なアプローチのみならず、非言語的なアプローチ、身体からのアプローチも視野に入れて研究や実践に取り組んでいく上で、本書は、理論的な観点からも実践的な観点からも、過去から新しいものまで知見を伝えてくれるものであり、何度でも立ち返り読むことができる本です。多くの方々の研究や実践に参考となる情報をもたらしてくれる一冊であると思います。(中島賢)

 

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